パリの文化・歴史
パリの文化・社会・歴史:パリの自転車

パリの自転車

パリの環境と風景を変える新しい交通手段   
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パリの文化・社会・歴史:ヴェリブのレンタルスポット

パリの自転車

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パリの文化・社会・歴史:パリの自転車
パリのレンタサイクルVelib

パリに似合う乗り物、自転車

パリの石畳を自転車で軽やかに走り抜ける。フランス映画でもよく見られるパリ・イメージの一つかもしれません。しかし最近では、実際に多くの自転車がパリの街中を走っています。排気ガスの少ないエコロジカルな街を目指すパリ市の政策の一環として、自転車での移動が勧められているためです。最近ではヴェリヴというパリ市によるレンタサイクルサービスもあり、その規模を拡大しています。そもそも自転車はフランスで生まれたと言われている乗り物。自転車の発明から現代のレンタサイクルまでの歴史を見ていきましょう。

自転車の歴史

自転車の発明

自転車の始まりはフランス革命の翌年である1790年にド・シブラック伯爵がセレリフェール(Célérifère)という木製の2輪車を造ったとされていますが、現在その史実の信憑性は低いとされています。伝説によれば、それは木製の胴体にライオンなどの動物を模した頭をつけて2つの車輪を並べた乗り物でした。地面に足を蹴って進みましたが、車輪が固定されていたために方向転換はできなかったそうです。1817年にはドイツ人のドライス伯爵が自転車を発明し、翌年の1818年にパリで特許申請しました。彼は自転車の始祖と言われ、彼の発明した乗り物が現在の自転車の原型になったそうです。ペダルもクランク、チェーンもなく、両足で道を蹴りながら進む乗り物だったようですが、すでにハンドルが設置されて方向転換も可能でした。初期の自転車はパリで瞬く間に流行し、リュクサンブール公園で自転車に乗って楽しむ人を描いた版画が残されています。ドライジーネが自転車を発明した翌年には、イギリスのデニス・ジョンソンが同じ形式の自転車を発明し、ホビーホースという名前でイギリス国内でも自転車ブームが起こりました。

世界最初の量産自転車

1860年、パリで馬車修理業を営むピエール・ミショーの元にホビーホース(英国の自転車)の修理依頼が入りました。しかし下り坂にあった彼の店ではその乗り物の足の置き場に困り、その解決策としてペダルとクランクを装着することを思いついたと言われています。彼によって改良された自転車はペダルとクランクだけでなくハンドルとブレーキも装備され、世界最初の量産自転車ミショー(Michaux)としてヨーロッパ各地に普及しました。

自転車レースの開始

1867年、自転車販売で成功したピエール・ミショーが前輪の大きなタイプの自転車をパリ万博で展示。これによって自転車は一部のフランス人の間で人気になり、翌年には自転車のロードレースが始まりました。1880年代には動力をチェーンで送る二輪の大きさが同じ自転車が登場しましたが、タイヤはまだゴムではなく、鉄の車輪で乗り心地はよくなかったそうです。

ミシュラン兄弟によるゴムタイヤの発明

チューブ付のゴムタイヤが発明されたのは1888年以降。ミシュラン兄弟の登場によって、自転車の乗り心地はぐんと改善されました。弟のエドゥアール・ミシュランは後に世界的に有名なタイヤメーカーミシュランを設立し、兄のアンドレ・ミシュランはドライブ用地図を作成しました。1890年代には自転車博覧会が開かれ、自転車の認知度は急激に広がりました。世界的に有名な自転車レース、ツール・ド・フランスが始まるのはその数年後の1903年です。

パリの女性と自転車

手軽な乗り物として人気となった自転車はフランスの女性にも好まれるようになりました。その人気ぶりはすごく、ブーローニュの森にはサイクリスト用のカフェができたほど。プルーストの小説『失われた時を求めて』に出てくる自転車に乗った少女アルベルチーヌはそんな時代に生まれたヒロインです。主人公は新しい乗り物である自転車と伝統を守るブルジョワ階級の少女という組み合わせに好奇心をそそられたのかもしれません。それまで乗馬をしていたスポーツ好きの女性はスカートからニッカーポッカーに履き替えて、自転車という新発明を楽しみました。そのため自転車が普及し始めた19世紀末には、女性のスカートを膨らませる機械クリノリンが廃れましたが、クリノリンを作っていた業者は同じ鉄骨を生かせる自転車メーカーへと転業し、成功を収めます。プジョーはその代表例です。 パリの文化・社会・歴史:パリのレンタルサイクル「ヴェリブ」
ヴェリブのレンタルスポット(セーヌ河岸)

新しいパリの自転車ヴェリブ

20世紀は車の時代でもありましたが、21世紀になって再びパリで自転車に乗る人が増えてきました。それは自転車シェアシステム「ヴェリブ(Velib)」が登場したことがきっかけです。エコロジーの風潮も追い風になって、数年前よりパリの新しい交通手段として注目されています。ヴェリブとはフランス語の「Velo(自転車)」と「libre(自由)」を掛け合わせた造語。車による空気汚染を防ぐ都市環境対策の一環として2007年6月にサービスが開始されました。自転車は灰色を基調としたシンプルなデザインですが、逆にパリの街を引き立てているのは見事。パリという美都は自転車にさえパリの景観を配慮させて成り立っていることを感じさせます。

パリの景観を守るパリ市の秀逸な自転車プラン

現在、ヴェリブの運営はパリ市ではなく、広告会社であるJCデュコー社(JCDecaux)が行っています。同社は広告料を元にその運営費をまかなっていますが、自転車自体に広告物は一切掲載されていません。それはパリの景観保全を重要視するパリ市の厳しい規制があるため。パリ市内に屋外広告物を設置することは原則禁止されているのです。ただパリ市は一部の限定された場所に広告を出す権利をJCデュコー社に限って独占的に認めることでJCデュコー社の高い利益を保証し、その見返りとして同社に自転車の運営を依頼しています。そうすれば市内に広告が氾濫することを防ぐだけでなく、自転車という交通手段によってパリ観光の利便性の向上につながります。ちなみにJCデュコー社は公共自転車の運営以外に公衆トイレの設置と運営も請け負っています。つまり、パリ市は一つの企業に利益を与える代わりにパリの景観保全や観光イメージ向上のための公共事業を代行させているわけです。また一部の場所に限られた広告の内容に関しても条件があり、文化芸術関連のイベントに限ることで観光都市パリのイメージアップを図っています。

パリ市長による自転車プロジェクト

2000年代からパリ市内での自転車の利用が増えてきたものの、いまだに街は車中心となっているのが現状でした。しかし2010年代後半からパリ市長アンヌ・イダルゴの主導によりパリは歩行者や自転車に優しい街に変化しようとしています。イダルゴは自転車で15分で誰もが必要な場所に行ける「15分シティ」の提唱者としても知られ、2014年にパリ市長に就任して以来、車を排除し自転車優先の街にするための大胆な都市計画を打ち出してきました。彼女の計画はすぐに実行され、パリの多くの場所で自転車専用道路が作られました。その方法は車道の一部を自転車専用道路に変えるというもので、2車線の道路は1車線に変更されました。毎月第一日曜日に開催されるノー・カー・デイ(自動車禁止の日)も彼女の施策の一つです。

コロナで変わる自転車利用

車道の縮小は自動車通勤者やタクシー会社からの反対も起きましたが、新型コロナウイルスの流行が彼女の施策を後押ししました。在宅勤務が増え車の交通量が激減したことで、パリ市内を快適に移動できると誰もが実感するようになったのです。通勤に公共交通機関を使っていた人々がこれを機会に自転車に乗るようにもなり、自転車の使用量は2019年から2020年にかけて2倍に増えたそうです。大きな変化の一つがリヴォリ通りです。車の往来が激しかったパリの目抜き通りの一つですが、2020年のロックダウン明けより自動車の通行が禁止になりました。コロナ禍におけるパリ市の自転車計画の柱となるのが「パリ100%サイクリング計画」(2021〜2026)で、コロナ禍に生まれた約50kmの自転車専用道路「コロナピスト」の恒久化や130kmの自転車道路の新設、13万台分の駐輪スペースの新設、パリ五輪によるスポーツサイクリングの推進などが含まれています。また2024年にはパリ市内でのディーゼル車の通行が禁止され、2030年までにはガソリン車の通行も禁止になる予定です。

形を変えてパリの交通を担ってきた自転車。今では環境に優しい観光都市になるための手段としてパリ市が中心となって利用を促しています。パリ市民の足だけでなく、観光客のサイクリングとしても利用されているので、パリ旅行の際に利用されてみてはいかがでしょうか。観光でのサイクリング利用を予定している方はパリ観光局の自転車で巡るパリを参考にしてみてください。

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