ルーヴル・ピラミッド
Pyramide du Louvre

建設反対もされていた、20世紀パリの象徴

100年前の建物が多く残るパリで、奇抜な建築はあまり見かけません。それはそうした新建築の数が少ないのが理由というよりは、それらがパリの風景に巧みに溶け込んでいるせいかもしれません。ルーヴル美術館の前にある「ルーヴル・ピラミッド」もその一つで、ガラス製と金属でできた巨大なピラミッドは一見奇抜に見えますが、すでに周りの風景との調和がとれているように見えます。1989年に完成したこのピラミッドは、ルーヴル美術館前のナポレオン広場にあり、ルーヴル美術館のメインエントランスになっています（美術館の入り口は他にも複数あります）。日中に訪れればルーヴル美術館に入るための観光客がピラミッドの前に列を作っている日常風景を見ることができるでしょう。

ルーヴル・ピラミッドの歴史：美術館の改装の際に作られた

1980年、ルーヴル美術館は十分な展示スペースを作れないという課題に面していました。増えるコレクションに対して展示する場所がないため、美術館としての機能が失われていたのです。そのため、新たな空間を確保するためルーヴル美術館の全面改装が1981年に決定。設計を担当したのは中国系アメリカ人建築家のイオ・ミン・ペイ（I・M・ペイ）でした。この改装計画は当時のフランス大統領フランソワ・ミッテランが計画した「パリ大改造計画」（Grands Projets）の一部でもあり、イオ・ミン・ペイはコンペを経ることなく大統領より直接任命されました。 イオ・ミン・ペイは美術館に囲まれたナポレオン広場の地下に5万平方メートルの巨大な中央ホールを作ることで空間を確保し、地上には美術館の新たな玄関としてガラスのピラミッドを建設しました。これにより館内の展示スペースを拡大し、コレクションがあるシュリー翼・ドノン翼・リシュリュー翼への最短ルートを実現。建設当時は古典的建築の前に近未来的建築を配置することに対する非難などの論争が起こりましたが、今ではその見事なまでの融合美が評価され、パリのランドマークの一つになっています。ちなみに大ピラミッドの周囲には広場をコの字型に囲む建物に沿う形で3つの小さなピラミッドが配置され、採光窓の役目を果たしています。