フランス映画レビュー

『若い女』
Jeune femme

2017年に公開されたフランス映画で、女性監督レオノール・セライユのデビュー作。この作品は監督がフランス国立映画学校の卒業制作として書いた脚本を基に制作されたが、カンヌ国際映画祭で新人監督賞(カメラドール)を受賞し、その後も多くの映画祭で評価された。

『若い女』(写真提供:Unifrance)
"Jeune femme" photo by Unifrance

ストーリー

30代の女性ポーラはパリで独りだった。有名カメラマンの恋人と喧嘩をしてアパートメントを追い出され、しまいにはドアに頭をぶつけて怪我をしてしまう。治療先の病院では医者に暴言を吐き、一文無しのまま恋人の猫を盗んでパリの路頭に迷う。就職のための学歴も助けてもらう家族や友人もおらず、 絶望的な状況に追い込まれるが、ある偶然と持ち前の楽観主義から、周囲の世界との接点と希望を再び見出していく。しかしそれは危ういパリ生活の始まりでもあった。 『若い女』(写真提供:Unifrance)
"Jeune femme" photo by Unifrance

激しく切実な演技

冒頭から主演のレティシア・ドッシュから目が離せない。文字通り体当たりの激しい演技で世界と対峙していく様は、パリという都会で生きる現代のフランス女性を体現している。不平と要求を繰り返しながら自己を主張する彼女の無秩序で奔放な性格は、周囲の人との間に問題を起こす。しかしそれはパリで生きるために必要な摩擦であり、都会に住む人間にとって必要な相互依存でもある。不器用なポーラにとってはバランスを欠いた依存ではあるが、彼女なりに周りに助けを求めることで彼女は人生を前に進めていく。レティシア・ドッシュの演技は多くの観客の共感を呼び、リュミエール賞の最有望女優賞を受賞した。 『若い女』(写真提供:Unifrance)
"Jeune femme" photo by Unifrance

パリで暮らすことのハードさ

実際にパリで生きていくのは簡単ではない。映画ではその事実をリアリティをもって描いている。花の都パリの裏側を描いた作品とも言えるだろう。映画の中で彼女は言う。パリは人間が嫌いなのだと。都会というのはどこも人間に対し冷たいし、それはパリも例外ではないだろう。しかし、パリには困った人に手を差し伸べる人間が多くいる。この映画はコメディタッチのドラマでありながら、パリで暮らすことのつらさを切実に描いている。その一方でパリで暮らすことの自由さについても描きだしている。 『若い女』(写真提供:Unifrance)
"Jeune femme" photo by Unifrance

多様な人間関係

見ていて驚くのは多様なパリの人間関係だ。彼女は必死になって生活の糧を得るため、手当たり次第に求人を探す。デパートの下着売り場の店員、ベビーシッター、出会い系。どれも経歴を偽って得たその場しのぎのバイトだ。またメトロの車内で旧友と勘違いして話しかけてきた見知らぬ女性を頼り、彼女の家で過ごしたりもする。絶縁された実家に無断で入り込み、居合わせた母と喧嘩になる。そのような危うい人間関係が綱渡り的に次々と描かれていく。妊娠が発覚してよりを戻そうと言ってきた写真家の恋人と別れ、デパートの警備員として働くアフリカ移民と新たな恋をする。せわしなく行動する彼女の心理は分からないし、生活と感情は常に変化する。それこそが現代パリの日常生活であり、それがハードでありながら魅力的人間見えるのは、ポーラ自身の強い明るさがあるからだろう。 『若い女』(写真提供:Unifrance)
"Jeune femme" photo by Unifrance

絶望を切り抜ける明るさ

絶望的な状況にありながら、ポーラは持ち前の楽天的な明るさで目の前の相手に話しかけることであらゆる問題を解決しようとする。しかし、彼女の原動力はどこにあるのか。こんなにつらい状況で彼女自身が拠り所にしているものは何なのか。答えは出ないまま映画は終わる。問題を少し先延ばしにしながら人生は続く。それもまたパリ生活の一側面なのかもしれない。
フランス映画
『若い女』 / Jeune femme
監督:レオノール・セライユ(Léonor Serraille)
出演:レティシア・ドッシュ(LAETITIA DOSCH)、スレイマン・セイ・ンディアイ(SOULEYMANE SEYE NDIAYE)、グレゴワール・モンサンジョン(GREGOIRE MONSAINGEON)
制作会社:Blue Monday Productions
制作年:2017年
日本公開:2018年8月25日
時間:97分

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