パリの文化・歴史
パリの文化・社会・歴史:パリの街灯

パリの街灯

夜のパリに欠かせない公共照明   
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パリの街灯

パリのシンボルとなった街灯

パリの街といえば、石畳の他に街灯(外灯)を挙げる人がいるかもしれません。それほどパリの街灯はこの街によくなじみ、パリの風景を彩る重要なシンボルにもなっています。まるで一人の人間のように街に立つ街灯たちに親しみを覚える人も多いのではないでしょうか。この光は一体いつ頃からパリにあるのでしょう。街灯の歴史はとても古く、約250年前にさかのぼります。

ロウソクからオイルランプへ

街灯のない時代、パリの灯りと言えばロウソクだけでした。約100年間、ロウソクの時代が続きました。ロウソクに代わる光が現れたのは1763年。新しい街灯のアイディアコンクールが開かれ、オイルランプ(レヴェルベール灯)が採用されてからです。このオイルランプはパリの街中に1,200箇所設置されたと言われています。これは半球状の反射鏡によって光を下に反射させるもので、ロウソクより格段に明るくなり点灯作業もずいぶん楽でしたが、ずっと見ていると目を傷めてしまうという欠点がありました。しかしオイルランプにパリの光が変わってからは、治安もだいぶ改善されました。そのため夜中の1時2時になっても出歩く人が増えたそう。夜は夜警と犯罪者だけでなく、街を楽しむ人のためのものになっていきました。

光の届かない場所では犯罪も

しかし外灯が多くなり明るさが増しても、いったん小さな路地に入れば光の届かない闇の世界がたくさん残っていました。今でもそうですが、当時の闇の深さは現代とは比べ物にならなかったといわれます。そのような暗い街路ではまだまだ犯罪も多く、道先案内人と呼ばれるランタンを持ったガイドの助けが必要でした。またレヴェルベール灯はときにパリを監視する権力の象徴とみなされ、いったん暴動が起こると真っ先に攻撃の対象となりました。ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」にもその光を巧みに扱った描写が出てきます。

ガス灯の登場により現代のパリのイメージへ

レヴェルベール灯は大革命やナポレオン帝政を経て、1830年頃までパリの町を照らし続けました。そしてついに1830年代に、パリの光に革命が起きます。ガス灯の登場です。その明るさは前のレヴェルベール灯に比べて格段に勝っていました。長い棒を持ったガスの点灯夫が夕暮れ時にガス灯にやってきて明かりを一つずつ灯していったと言われています。19世紀中頃の第二帝政期には、劇場街グランブールヴァールでガス灯はおおいに活躍しました。すでにパリの繁華街はパレ・ロワイヤルからグランブールヴァールへ移っていた頃でした。そしてこのころからボードレールような夜の孤独な散策者が現れ、多くの詩人や散策好きがそぞろ歩きを楽しむようになります。ガス灯は多くの夜間散策者を生み出したのです。

またガス灯は、パリの景観も変えました。ガス灯になって初めて「灯柱」が登場し、それは今のパリのイメージそのものになっています。それまでのレヴェルベール灯はエネルギー源が油だったので、点灯夫が給油しにやってくる必要がありましたが、ガス灯になってからは、ガス工場からガスを直接パイプで運ぶ構造になったため、地面から生える灯柱が必要でした。この灯柱のデザインは当時からほとんど変わらず、今もパリで見ることができます。日本でいえば江戸時代からデザインが変わっていないことになります。これは灯柱の製造業者は150年間変わらず、当時と同じ会社が今も製作しているからです。

電灯の登場

19世紀末、ついに電灯が登場し、20世紀にはガス灯と電灯が併用されるようになりました。そして1962年に最後のガス灯が電気に変わり、ガス灯の歴史は幕を閉じることになります。郷愁の光であったガス灯でさえ、とうとうパリの街から消えてしまいました。しかしガスを送り込んでいた灯柱はそのまま電灯にも利用されたため、見た目上のパリの景色は変化せずにすみました。パリが今でもその昔の美しさを保っているのはそのためです。光の都パリは闇から生まれ、今でもかつての光を私たちに与え続けています。

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