パリからオヴェール・シュル・オワーズまでドライブ

ゴッホが晩年を過ごした小さな村へ

オヴェール・シュル・オワーズ（Auvers-sur-Oise）はパリ北部にある小さな村です。19世紀まで無名だったこの村を世界的に有名な観光地にしたのは、印象派画家のヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。1890年5月20日、プロヴァンスの精神病院を出たゴッホは、人口7000人に満たないこの村に移ってきました。彼がこの地に移住した理由は、故国オランダで慣れ親しんだ明るい光を見出し、創作のインスピレーションを得ようとしたためでした。また友人であり保護者でもあった精神科医ポール・フェルディナン・ガシェ博士がその村にいたことも理由の一つでした。オヴェール・シュル・オワーズで滞在を始めたゴッホはすぐに制作にとりかかり、毎日少なくとも1作は絵画かスケッチを描きました。しかし、彼の滞在は長くは続きませんでした。2か月後の7月29日にゴッホは自らの命を絶ちました。

ゴッホの家や彼が描いた教会を訪れる

現在オヴェール・シュル・オワーズはゴッホの聖地として世界中から観光客が訪れるようになりました。ヴァン・ゴッホの家（Maison de Van Gogh）は最も人気の観光地で、もともとはラヴーの宿屋（Auberge Ravoux）でした。ゴッホはこの宿屋に70日間滞在し、絵を制作しました。現在は1階が同名のレストランになっています。ゴッホの家の北西には画家シャルル・フランソワ・ドビニーのアトリエ（Maison-Atelier de Daubigny）があります。ドビニーは戸外での絵画制作を重視した画家で、印象派絵画の先駆として知られています。画家カミーユ・コローやオノレ・ドーミエが手伝ったそのアトリエの装飾は非常に美しいものです。ドビニーのアトリエの西には17世紀に建てられたオヴェール城（Chateau d'Auvers）があり、ゴッホやポール・セザンヌ、カミーユ・ピサロなどの印象派画家たちの貴重な映像資料を見ることができます。同じ道沿いにあるのはフランスのリキュールであるアブサンに関する展示があるアブサン博物館（Musee de l'Absinthe）。ゴッホが発病した原因になったとも言われているリキュールの歴史を学ぶことができます（当時アブサンは幻覚作用を引き起こすと言われ、芸術家の間で愛飲されていました）。また村にあるノートルダム教会（Eglise Notre Dame）はゴッホの有名な作品『オヴェール教会（L'Eglise d'Auvers）』（1890）のモデルになりました。この村で亡くなったゴッホは、この教会墓地に弟テオとともに埋葬されています。ゴッホの足跡を辿る旅の最後に是非訪れてみてください。