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パリ文学スポット:シェイクスピア・アンド・カンパニー書店

シェイクスピア・アンド・カンパニー書店

パリ修業時代のヘミングウェイが通った伝説的書店
パリ文学スポット:シェイクスピア・アンド・カンパニー書店

シェイクスピア・アンド・カンパニー書店

パリ修業時代のヘミングウェイが通った伝説的書店

作家や読書家にとって、書店というのはいつの時代も精神的な拠り所です。ネットで本を買える便利な時代になっても、その力が失われてないことを示す重要な書店がパリにあります。ヘミングウェイに本を貸したシルヴィア・ビーチの経営するシェイクスピア・アンド・カンパニー書店です。シェイクスピア書店はパリ住むアメリカ作家を支援するために1919年に開かれた英文書専門の書店です。最初はデュプイトラン通り8番地にありましたが、1921年5月にオデオン通り(Rue de l'Odeon)12番地に移りました。ノーベル文学賞を受賞したアメリカの作家ヘミングウェイはパリでの作家修業時代にこの書店に通っていました。お金のなかった若き日のヘミングウェイはこの書店の図書室で本を借りて読んでいました。ヘミングウェイがこの書店に初めてやってきたのは1921年12月28日のことでした。彼はその日に早速12フラン払って貸出会員になり、ロレンスの『息子たちと恋人たち』、ツルゲーネフの『猟人日記』、トルストイの『戦争と平和』、ドストエフスキーの短編集を借りています。そしてこれ以後、シェイクスピア書店は、これから始まるヘミングウェイのパリ文学修業に欠かせない場所になっていったのでした。

20世紀最大の問題作『ユリシーズ』を出版

またヘミングウェイが作家ジェイムズ・ジョイスや詩人エズラ・パウンドに出会えたのもシルヴィア・ビーチのおかげでした。シェイクスピア・アンド・カンパニー書店は、単に英語の書籍を売るだけでなく、多くの作家たちの出会いの場としても重要になっていきました。この書店の最大の文学的業績としては、やはりジェイムズ・ジョイスの問題作『ユリシーズ』を出版(1922)したことです。シルヴィア・ビーチは当時猥褻表現が多いことで発禁となっていたこの作品にほれ込み、自費で出版にこぎつけました。シルヴィア自身も『シェイクスピア書店』という自伝を書いていて、ヘミングウェイとジョイスのことが頻繁に出てきます。シルヴィア・ビーチの書店は長い間パリの文学的シンボルとなっていて、英語を読みたいアメリカ人たちにとって心の拠り所でした。しかし世界恐慌で多くのアメリカ人たちが祖国へ帰ると、この書店の経営も苦境に陥っていきました。そして第2次世界大戦中の1941年、ドイツ占領下のパリで閉店を余儀なくされます。それ以降シェイクスピア書店が再開することはありませんでした。オデオン通り12番地にはその書店があったと書かれたプレートが残るのみです。

伝説を受け継ぐ、シェイクスピア書店の2代目

1951年、パリ5区のセーヌ河近くにひとつの書店がオープンしました(写真・上)。これがシルヴィア・ビーチの意志を受け継いだ2代目シェイクスピア書店。セーヌ川を挟んでノートルダム大聖堂の見えるブシュリー通り(rue de la Bucherie)37番地にあります。オープン当時はル・ミストラル(Le Mistral)という名前で、ジャック・ケルアックやヘンリー・ミラー、アレン・ギンズバーグなどのビートニク作家に人気の場所でした。しかしシェイクスピア・アンド・カンパニー書店の店主シルヴィア・ビーチが1962年に亡くなると、彼女の文学的意思を継いで店名をシェイクスピア・アンド・カンパニー書店に変えました。今では世界中の文学ファンが集まる文学のユートピアのような役割を担っています。パリに滞在するアメリカ人学生や読書好きな旅行者のメッカになっていて、文学の香りが色濃く漂います。パリ時代のヘミングウェイの代表作『日はまた昇る』がよく売れているそうです。

店内は文学好きの人たちが集まる心地よい空気で満たされ、常に活気に溢れているので入りやすいです。1階は英語の本が所狭しと並び、文学の濃厚な世界に酔いしれることができます。2階はシルヴィア・ビーチ記念室になっており、シルヴィア・ビーチ関係の資料がそろっています。彼女が出版した『ユリシーズ』などの貴重書も保管されています。また2階では当時のタイプライターで文章を打つこともできます。定期的に作家を招いての講演会や朗読会などを行っており、文学好きにはたまらないパリの文学スポットです。2011年にはウディ・アレンの映画『ミッドナイト・イン・パリ』にも登場し、注目されています。店主はジョージ・ウィットマンで、現在は娘のシルヴィア・ウィットマンが経営しています。1代目の店主シルヴィア・ビーチと名前が一緒なのは奇妙な文学的偶然です。

書店の2階に泊まることもできる

2代目のシェイクスピア&カンパニー書店は、他の書店にはない大きな特徴があります。2階に上がると書棚に囲まれてベッドのある部屋が。お金のない作家志望の人が書店に宿泊しているのです。いくつかの条件をクリアすれば(執筆計画がある、1ページの自伝の提出、1日1冊本を読む、2時間書店の仕事を手伝う)、誰でも泊まることができます。かつてヘミングウェイが読んだ古書たちに囲まれながら、素晴らしい文学世界の中で読書することができます。書店で開かれるイベントで有名な作家たちに会うこともできます。しかも料金は無料です。本が好きで執筆する意欲があれば、誰でも滞在できる。まさに文学のユートピアにふさわしい貴重な場所。お店の中のプレートにはこう書かれています。「見知らぬ人には親切にしなさい。彼らは変装した天使かもしれないから」。作家・芸術家にやさしい街パリが生んだずっと残ってほしい書店です。
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