クロズリー・デ・リラ
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作家たちに愛されたモンパルナスの庭付き老舗カフェ
かつて「世界の首都」と言われていたパリのモンパルナス。そこには20世紀の始めに多くの芸術家が集まり、カフェで多くの議論が交わされました。カフェなくしては絵画や文学作品が生まれなかったとさえいえます。ベルエポックの時代、作家たちはカフェで議論し、カフェで作品を生み出していきました。そんなカフェの喧騒の中で、少し離れた場所にあったのがクロズリー・デ・リラ。こんもりとした緑の木陰の中にある、少々秘密めいたカフェ&レストランです。創業は1847年の老舗。一世を風靡したドーム、ロトンド、セレクト、クーポールなどのカフェと共に芸術家の間で人気の店でした。リラの花が咲く緑の隠れ家的な美しい庭が特徴で、フランスの田舎にいるような気にさせてくれます。ヘミングウェイお気に入りのカフェ
クロズリー・デ・リラはアメリカ作家ヘミングウェイゆかりのカフェでもあります。パリで作家修業をしたヘミングウェイは、徒歩5分程度のところ(113 rue Notre-Dame des Champs)に住んでいて、よくこのカフェに足を運んだといいます。晩年のエッセイ『移動祝祭日』の中で、彼はこのカフェを「パリでも最上級のカフェのひとつ」と称賛しています。ヘミングウェイの長編デビュー作『日はまた昇る』(1926)や代表的な短編『大きな2つの心臓の川』もここで書かれました。彼がお酒を飲んだカウンター席、彼がテラスでよく見上げたナポレオンの部下ネイ将軍の銅像は今も同じ場所に残されています。ヘミングウェイが作品を書いた席で、スコッチを傾けるのも贅沢な時間の一つです。カフェの前に立つネイ将軍の謎
クロズリー・デ・リラの前にはフランス皇帝ナポレオン1世の部下だったミシェル・ネイ将軍(1769-1815)の像があります。ヘミングウェイのお気に入りだった彼の像は何故ここに立っているのでしょう?ネイ将軍はナポレオン軍の忠実な将軍であり、ナポレオンからも「勇将中の勇将」として信頼を得ていました。1815年2月、エルバ島に流された皇帝ナポレオンが島を脱出したときも、すぐに皇帝のもとに参じて共にパリへ進撃し、王政復古していたルイ18世を退位させました(百日天下)。しかしワーテルローでナポレオン軍が敗戦すると、1815年12月にリュクサンブール公園の隅で銃殺刑を処せられて亡くなりました。しかし実はネイ将軍を撃った銃は空砲で、彼はその後アメリカに亡命し1846年まで生きたとも言われていますが真相は定かではありません。現在、クロズリー・デ・リラの前に立つネイ将軍の記念像は最初は違う場所にありました。彼の像ができたのは銃殺の行われた1815年から40年近く経った1853年。除幕式のあとに彼の殺害された現場(モンパルナス大通りとサン・ミシェル大通りの角)に設置されました。制作者のフランソワ・リュドは銃殺場面のネイ将軍を表現しようとしましたが、ナポレオン3世の反対にあったので剣を抜いて部下たちを鼓舞するネイ将軍の像に変更しました。その後パリ南郊外へのソー行き電車を敷設するために、彼の像は道の反対側に移動させられます。それが現在芸術家のカフェ クロズリー・デ・リラの前にあるネイ将軍の像です。
リラの常連だった詩人ポール・フォール
クロズリー・デ・リラは19世紀にはボードレールやヴェルレーヌなどの詩人に愛されました。ランボーと駆け落ちしたことで有名な詩人のポール・ヴェルレーヌは、毎週火曜日にクロズリー・デ・リラにやってきては文学の友人たちと詩の交換会を開きました。その後20世紀になって、ヘミングウェイなどの作家が集まるようになります。フランスの詩人ポール・フォール(Paul Fort)がクロズリー・デ・リラに通うようになります。彼はレーニンとチェスをしたり、文学仲間のギョーム・アポリネールと集まったりしました。ヘミングウェイのエッセイ『移動祝祭日』にも、ポール・フォールがこのカフェの常連であったことが書かれています。ヘミングウェイがドス・パソスと酒を飲みながら文体について練ったのもこのこのカフェでした。1925年にオーナーが代わってバーが併設
1925年にはオーナーが代わり、店内にアメリカン・バーが併設されました。クロズリー・デ・リラはその当時からほとんど変わらず、今も当時の雰囲気を味わうことができます。ヘミングウェイはこのバーの席でバーボンを飲んだそうです。彼のお気に入りだった席には、〈E.Hemingway〉と書かれたプレートが埋め込まれています。カフェに通った著名人
その他のクロズリー・デ・リラの常連客には、アメデオ・モディリアーニ、アンドレ・ブルトン、ルイ・アラゴン、ヴァン・ドンゲン、パブロ・ピカソ、ジャン=ポール・サルトル、アンドレ・ジッド、ステファン・マラルメ、フォード・マドックス・フォード、オスカー・ワイルド、サミュエル・ベケット、マン・レイ、スコット・フィッツジェラルド、エズラ・パウンド、ヘンリー・ミラーなどがいます。現役の作家・俳優も
またクロズリー・デ・リラは文学遺産のカフェではなく、現役の作家にも愛されています。フィリップ・ソルレスは「第2のオフィス」としてこのカフェに出没するそうです(第1のオフィスはガリマール本社内)。最近では俳優ジョニー・デップも常連となっています。人気の秘密は、モンパルナスの中心地から離れた立地とその神秘性でしょうか。19世紀から21世紀の今に至るまで人気の文学カフェとして、今も同じ場所で営業しています。- パリ観光基本情報
- クロズリー・デ・リラ / La Closerie des Lilas
- パリのカフェ
- 住所:171 Bld du Montparnasse, 6e Paris
- 最寄メトロ:ヴァヴァン(Vavin)、RERポール・ロワイヤル(Port-Royal)
- エリア:モンパルナス
- カテゴリ:パリのカフェ
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