パリの文化・歴史
パリの文化・社会・歴史:フランスパンの歴史

パンの歴史

フランス人に欠かせないパンの歴史と魅力をご案内します   

パンの歴史

フランス人の生活に欠かせないもの

パリに欠かせないものといえば、エッフェル塔や凱旋門などが最初に浮かぶかもしれません。しかし観光地としてのパリではなく地元の人々の日常生活に欠かせないものといえば、パン以外には考えられません。そしてそれはフランスで生活する全ての人に共通の要素と言えるでしょう。フランスの子供たちが最初にするお手伝いは、パン屋にバゲットを買いに行くことだと言われています。フランスパン連盟によると、バゲットはフランス国内で年間60億本以上も売られているそうです。このように、フランス人にとってパンを食べる行為はなくてはならない生活の一部です。

パンの歴史:古代エジプトからフランスへ

パンはフランス語ですが、パンという料理そのものはフランスが発祥ではなく、古代メソポタミアと言われています(起源に関しては諸説あります)。今から8000年〜6000年ほど前、古代メソポタミアでは小麦を水でこねて焼いたものを食べていたそうです。その後パン作りが古代エジプトに伝わり、小麦を使ったパンと大麦を使った飲み物(ビール)が造られていました。この頃に発酵菌を使った自然発酵パンが偶然生まれたと言われています。2500年ほど前にはパンの技法が古代ギリシアにも伝わり、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』では、パンを食べる行為が人間と神を区別するものと考えられました。特産であるオリーブオイルやブドウ液を使ったパンも造られました。その後、パンはギリシャを侵略した古代ローマ人の伝統的な食事となり、ワインと共に味わう主食になりました。ローマ帝国の拡大とともに、パン製法はヨーロッパ各地に伝わり、フランスにもその伝統は引き継がれていきます。

パンの歴史:修道院から各家庭へ

ローマ帝国の支配が終わると、各地に様々な国が誕生し、パン製法はフランスを始めとするヨーロッパ各地に浸透していきました。当時のヨーロッパではキリスト教の広まりによってパンは「キリストの肉」とみなされ、修道院を中心にパン作りが行われていました。各家庭でパン造りが可能になるのはルネサンス時代の14〜16世紀になってからでした。また中世フランスにおいてパンとスープは同じ言葉として使われていました。それは当時のパンがスープなしには食べれなかった(粥やスープに浸さなければ固くて食べれなかった)ことを意味しています。また17世紀頃までは食事を載せるお皿の代わりとしてパンが使われていたそうです。上流階級の間で陶器や銀の皿が使われ始めると、徐々に皿としてのパンの役割は消えていきました。

パンの歴史:白パンを巡る革命

古代メソポタミアから伝わりフランス人の主食となったパンですが、今私たちが想像するフランスパン(皮がカリッとして中が白い小麦パン)を全員が食べられるまでには長い時間がかかりました。フランスでは小麦でパンが造られていましたが、上流階級と労働者階級では食べるパンの種類が異なっていたからです。フランスを代表するパンであるバゲットも、1600年頃にはまだ庶民のためのパンではなく、裕福な階級のパリジャンが食べるパンでした。上流階級はふるいにかけられて精製された小麦粉を使った白いパンを食べていましたが、お金のない肉体労働者は白いパンを食べられず、ふるいにかけられていない小麦以外のライ麦やふすまなどが混ざった色の濃くて重いパン(ミケ)を食べていました。そして農民はパンを焼く十分な窯もなく、麦の節約のために年に1,2回しかパンを焼けなかったそうです。そのため、パンを焼く際に長持ちするように表面を固くして中を柔らかくするように焼きましたが。結果的にパンは固くなってしまい、よほどの食欲がない限り食べれるものではありませんでした。そのため、農民にとってパンの硬さは忍耐を表すものでもあり、次第にパンはフランス人の精神性を表すものとなりました。その後もお金持ちは白いパン、お金のない人はふすまパンという図式は変わらず、転機が訪れたのはフランス革命でした。革命の発端は凶作による小麦不足と言われ、誰もが平等に白パンを食べられるようにするための戦いでもありました。革命後の1793年に布告された法令では平等の体制が貫かれ、「金持ちは極上小麦の白パンを食べ、貧乏人はふすまパンを食べるということがあってはならない」と記されました。今のようにフランスの田舎でもバゲットが主食になったのは、第二次世界大戦の後だと言われています。

現在のパン

現在、フランスのパンは形状によって様々な種類があります。日本でもよく見かける棒状のパンは「バゲット」(baguette)。バゲットとはフランス語で「棒」を意味します。それよりも太くて短いのが「バタール」(batard)。バタールとはフランス語で「雑種、中間、折衷」を意味します。バゲットよりも大きくて長さもあるのが「パン・パリジャン」(pain parisien)。パン・パリジャンは名前のとおり「パリのパン」を意味します。他にも「田舎風」という意味を持つ丸形の「パン・ド・カンパーニュ」(pain de campagne)や大きな丸形パンである「ミッシュ」(miche)、「ブール」(boule)、 トースト用の食パン「パン・ドゥ・ミ」(pain de mie)、「細ひも」という意味を持つ細長い小型パン「フィセル」(ficelle)などがあります。

バゲットの長さは法律で決まっている
パンが国民食であるフランスではバゲットの長さや重さが法律で決まっています。バゲットの長さは80センチ、重さは300グラムとされています。また大きなパンの重さは1キロで、客の要望によって定められた価格で量り売りをしなければならないとされています。平等の国フランスならではの法律ですね。

フランスパンの硬さの秘密

柔らかい食パンや総菜パンを食べている日本人にとって、フランスのパンを初めて食べたときの衝撃は「硬い」ことではないでしょうか。何故あんなにパンの皮が固いのでしょうか?この硬さはパンを構成する材料によるものであり、小麦・塩・酵母・水のみで造られているからです(砂糖、バター、卵は使わない)。硬くて一見食べにくそうなパンですが、フランスのパンの美味しさはこの硬さにこそあります。その硬さが保たれることで3つの食感が味わえるからです。1つ目は「クープ」と呼ばれる表面に入った切目の部分の「バリッ」とした食感。2つ目は「クラスト」と呼ばれる黄金色の表皮をかじったときの「パリパリ」とした食感。そして3つ目は「クラム」と呼ばれる中の白い部分を食べたときの「もっちり」とした食感です。フランスのパンはシンプルな材料と絶妙なバランスの焼き加減により、3つの食感が楽しめるパンなのです。

バゲットがユネスコの世界無形文化遺産に

2022年11月30日、フランスパン「バゲット」がユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。この知らせを受け、マクロン大統領はバゲットを「250グラムの魔法と完璧な日常生活」と表現しました。パン職人の伝統技術とフランス人が長い間続けてきた生活様式が評価された結果となりました。フランス人がバゲットを食べていることを最初に見つけたのは外国からの観光客だったと言われています。それ以来、バゲットはフランス人のアイデンティティとなり、毎年パリのノートルダム大聖堂の前では、国内最高のバゲット職人を決めるコンテストが開催されています(優勝者には大統領が住むエリゼ宮にバゲットを1年間納品する権利が与えられます)。今回の世界遺産登録で世界に認められたバゲットはこれからもフランス人の日常生活に必要なものとして作られ続けるはずです。

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