要塞の跡地に造られたナポレオン時代の広場
シャトレ広場はパリ1区にある広場。黄金に輝く女神の像が目印です。この広場にはかつてシテ島を守る要塞がありました。その要塞(堡塁)はル・グラン・シャトレ(Le Grand Chatelet)と呼ばれ、パリ防御の拠点となっていましたが、その後歴史の流れの中で取り壊され、フランス皇帝ナポレオンの時代に広場となりました。広場自体に観光地としての魅力はあまり多くありませんが、パリで最も乗客数の多い駅の一つであるシャトレ駅があり、交通の要所として毎日たくさんの人が行き交っています。シャトレ駅はパリのメトロ(地下鉄)とRER(近郊列車)などの多くの路線が入ったハブ駅で、パリ観光の際に降りた方も多いのではないでしょうか。広場は2つの劇場の間に挟まれていて、広場中央にはナポレオンによるエジプト遠征の勝利を記念して建てられた噴水と勝利の女神の彫刻のついた支柱があります。
スフィンクスから水が噴き出す不思議な泉
広場が完成したのは1810年。皇帝ナポレオン1世による第一帝政の時代です。広場の中央にある噴水は「椰子の噴水」(la Fontaine du Palmier)または「勝利の噴水」(la Fontaine de la Victoire)とも呼ばれ、ナポレオンのエジプト遠征を記念して造られました。噴水はナポレオン1世の命によってFrancois-Jean Bralle (1750-1832)が設計し、1808年に完成しました。広場ができる以前に要塞が存在していましたが、1802年から1810年の間に取り壊されました。
時が過ぎ1858年、ナポレオン3世の元で広場は拡張され、噴水も高くなりました(拡張工事はセーヌ県知事オスマンによる「パリ改造」の一環として行われました)。噴水にはスフィンクス、果物、鷲、4人の女神などの豪華な彫刻が施され、スフィンクスの口から新鮮な水が噴き出すアヴァンギャルドな見た目はインパクトがあります。噴水の上に立つ円柱はヤシの木の幹をモチーフにしていて、頂上には噴水の名前の由来になったヤシの葉の彫刻があります。円柱の上に立つ勝利の女神が両手に持っているのは「栄光」や「勝利」を意味する月桂樹の花輪です。
カフェ「ル・サラ・ベルナール」(シャトレ広場)
パリ最大の劇場や中世の塔もある。シャトレ広場近くの観光地
広場自体は交通量が多い場所なのであまりゆっくり休憩することはできないかもしれませんが、広場の周りには多くの観光地があります。広場を挟むように立つのはシャトレ座とパリ市立劇場という2つの劇場。これらの劇場は19世紀のパリ改造の一環として、同時に建設されました。シャトレ座は1862年に造られた老舗の劇場で、パリ最大の劇場として知られています。パリ市立劇場は別名「サラ・ベルナール劇場」とも呼ばれ、コンテンポラリー・ダンスなどの現代劇が上演されています。また広場にはベル・エポックを代表する舞台女優だったサラ・ベルナールの名前が冠されたカフェ「ル・サラ・ベルナール」(Le Sarah Bernhardt)があります。シャトレ広場を眺めながらコーヒーを飲むことができるのでおすすめ。演劇を見る前の休憩にもいいですね。
かつて中央市場があったショッピングの複合施設
フォーラム・デ・アールにも広場から近く、この辺りには肉屋や皮革商の店などが多かったそうです。広場の隣にある
サン・ジャックの塔も元々サン・ジャック・ドゥ・ラ・ブシュリー教会(「肉屋のサン・ジャック」という意味)の鐘楼部分で、この周辺に肉屋が多かったことが名前の由来です。またシャトレ広場は
シテ島への玄関口となっていて、広場の南にある
シャンジュ橋(両替橋)からシテ島に渡ることができます。シャトレ広場から
ポンヌフに向かうセーヌ河岸には花屋など園芸品のお店が多く、河岸側にはブキニストが古本や絵葉書を売っています。ポンヌフまで歩けばルーヴル美術館まですぐ近くです。