パリのグラフィティ

下町パリのストリートアート

パリの路地裏や下町を歩いていると壁に描かれた絵やメッセージをよく見かけます。とはいっても、電車の車両やメトロに書きなぐられたような落書きではなく、その多くは立ち止まって見入ってしまうほどすばらしい芸術作品。パリは世界的に有名なウォールアート（街の壁に描かれた芸術）の聖地のひとつであり、その伝統は20世紀の始め頃から存在しています。これらはグラフィティ（Graffiti）やストリーアートとも呼ばれ。主に政治的な意見や地域社会の訴えを伝えるために描かれていますが、最近では芸術的な価値が認められ、観光名所の一つにもなっています。

グラフィテイの魅力

パリのグラフィテイの魅力は、歩いていてたまたま出会うことができる偶然性にあります。街中にあるウォールアートを見つけるためパリを探検するのはパリ散策の楽しみの一つ。好きなアーティストの作品を見つけたときの喜びは大きいですね。また、それぞれのグラフィテイの作者が伝えるメッセージやストーリーを知ることで理解が深まります。多くの作品は、社会問題や政治問題、芸術的な表現などを伝えるために制作されていて、アーティストの意思に共感することで、さらにグラフィテイの世界を楽しむことができます。

パリのグラフィテイが見られるおすすめエリア

グラフィティがよく見られるのはパリの下町メニルモンタンやベルヴィル、オーベルカンフ、ビュット・カイユ、フォブール・サンタントワーヌなど。どこもパリの中心を離れた地元の人が住む静かな地区です。世界にはロンドンのショーディッチやメルボルンのホイザーレーンなど、グラフィティで有名な観光エリアがありますが、パリのメニルモンタンもその一つ（まだ世界的に有名ではありませんが）。どのエリアにも共通するのは、もともとは寂れた空気の漂う治安のよくない地区であったこと。それが今では多くのアーティストが集まって街中が個性を発揮するためのキャンバスとなり、最先端のカフェやバー、ギャラリーができています。世界中の都市でグラフィック・アーティストの活躍の場が広がっているのです。

グラフィテイで有名なアーティスト

パリにもグラフィティで有名なアーティストがいて、彼らは下町を主な舞台にして壁に絵を描き続けています。そのなかでも「白い男」シリーズを描き続けるジェローム・メスナジェは人気のグラフィック・アーティスト。他にもステンシルなどを使って有名人を描くグラフィティ作家JEF AEROSOL（ジェフ・アエロゾル）やレトロなゲーム「インベーダ―ゲーム」をモチーフにした作品を制作し続けているInvader（インベーダー）、詩的なメッセージを込めたステンシルアートで知られる女性アーティストMiss.Tic（ミスティック）など、多くの有名なウォールアートの芸術家がいます。

パリ中心部にもあるグラフィティ

グラフィティはパリの下町だけではありません。注意深く観察すれば、パリの中心部でも見つけることができます。たとえばマレ地区では歴史的な建物と現代アートとのコラボレーションがよく見られますし、アートギャラリーの多いサン・ジェルマン・デ・プレでは多彩なグラフィティを見つけることができます。セーヌ河岸にもグラフィティは描かれ、気持ちのいい川辺の散策の中で意外なアートを楽しむことができます。

パリ市も支援するグラフィティ

最近では、パリ市や各区もウォールアートを積極的に支援し、公共施設や建物にアート作品を展示するプロジェクトを進めています。これらの政策の中にはパリ市内の美術館や博物館と連携し、パリ市民や観光客にパリの芸術についてより深く体験してもらうことを目的としているものも多く、グラフィティアーティストの活躍の場は広がっています。昔は落書きとして削除の対象にされていたグラフィテイですが、市民の理解が広がりつつある現在、パリの景観の重要な一部になっています。パリのウォールアートの歴史は今後もさらに発展していくはずです。

書籍になったグラフィティ

最近ではパリのグラフィティに関する本も出版されています。このような書籍を見ると、グラフィティは下町に描かれた非公式な落書きではなくアートとして認められていることがよく分かります。パリの書店や展示会では様々な種類のアート本が出されていて、芸術に対するフランスの自由な空気を知ることができます。パリでは壁までもが、自由を語るのです。パリに出かけた際にはぜひパリの壁に注目して地元の人々の自由な表現を見つけてみてください。