パリ東にある気持ちのいい緑のオアシス
パリ5区
カルチェラタンの東を歩いていると、不意に巨大な緑地帯が現れます。ここはパリの植物園で、国立自然史博物館に所属しています。誰でも無料で入ることができて、散策に最適。植物園というよりは公園のような雰囲気です。園内にはフランス式花壇のある美しい大通り、動物園や温室、自然史博物館などがあり、一人の散策でも家族連れでも楽しめます。蓮の花が浮かぶ池は園内の人気スポット。アルプスの植物を集めたアルプス庭園では、フランスでは見られない高山植物が咲き、写真愛好家が熱心に写真を撮っている光景が見られます。博物館の本館である進化大展示館には、動物の進化の様子が一つの吹き抜け空間にダイナミックに展示されていて迫力満点です。植物園の近くにはパリで有名なイスラム教の寺院
モスク(ラ・モスケ・ドゥ・パリ)があり、アラブ文化のカフェやレストランも併設されているので散策の合間の休憩におすすめです。
最初は国王の所有だった。ルソーも訪れた庭園
パリ植物園はルイ13世の時代、フランス南部のモンペリエに次いで1633年に王立薬草園として設立されました。薬理学と植物学の基礎を学ぶ場所として、世界中から植物が持ち込まれました。18世紀にはビュフォンが王立薬用植物園の整備に力を注ぎました。彼は1739年に庭園管理官に任命され、41年間もの長い間その任務につきました。この間に有名な『博物誌』(1749〜)を書きました。この時代は、啓蒙思想の時代(18世紀)で、宗教に代わって自然が重要視され、そのため植物園も社交界で注目されました。自然研究が国の産業の育成に役立つとされ、王室が自然研究者たちに協力しました。そしてビュフォンの『博物誌』はその時代の作家ルソー、ディドロ、ヴォルテール、グリム、ラマルクなどに影響を与えました。またその中の一人である啓蒙思想の代表者ジャン=ジャック・ルソーは、人生の後半を植物学の研究に捧げ、植物園に植物の種を寄贈しています。フランス革命後、植物園の管理は王家を離れて国有化され、大温室や小動物園、図書館などを併せ持つ自然博物館になりました。現在はフランスの文部省・研究省・環境省が管理する国立自然史博物館の一部になっています。この植物園に関係した科学者には、ビュフォンやジョルジュ・キュヴィエ(Georges Cuvier)など世界的に有名な博物学者が多く、この付近の通りの名前にもなっています。
植物園内には人気の動物園も
植物園の一角に、子供たちに人気の動物園があります。これはもともとブルボン家の所有だったヴェルサイユ宮殿にあった動物園です。王家がヴェルサイユから追われたフランス革命の後に、ここへ引っ越してきました。動物の管理も王侯から動物学者へ。動物たちが一般市民に親しまれるようになりました。ちなみに19世紀に一番人気だった動物は熊だったと言われています。中世最大の猛獣は、動物園では人気者になったわけです。
アンリ・ルソーが描いたジャングル世界のモデルになった
印象派の画家アンリ・ルソーは、熱帯の密林のような不思議な絵で有名ですが、あのスケッチはパリ植物園で行われました。園内の温室にある熱帯の植物をスケッチし、それに独特な世界観を加えて絵にしました。オルセー美術館やポンピドゥーセンターにあるルソーのジャングルの絵を観て、植物園から南方の楽園を夢想したルソーの気持ちになってみるのもいいかもしれません。