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パリの人気地区:サン・ルイ島

サン・ルイ島

中世の牧場から高級住宅地へ。17世紀の建物が残る、パリの中心にある静かで美しい島
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サン・ルイ島

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サン・ルイ島の河岸

パリの中心にある静かな島

パリの中心部にありながら、静かで独特の雰囲気を保った場所があります。シテ島の隣(上流)にあるサン・ルイ島です。セーヌに浮かぶ小島で、隣のシテ島と並んで「パリ発祥の地」とされています。今では高級住宅地となっていて、パリジャンの誰もが一度は住んでみたいと考える憧れの島です。島には教会が一つあり、17世紀の美しい個人邸宅が並ぶ牧歌的なサン・ルイ島の道は、まるで田舎のようにひっそりとしています。

島内にある建物は主に16〜17世紀に造られた美しい館ばかり。ヴェルサイユ宮殿の建設に携わったことで有名な建築家ルイ・ル・ヴォーの作品(ローザン館、ランベール館、サン・ルイ・アン・リル教会)が多く残っています。パリで唯一メトロのないエリアでもあるため、他のパリ観光地と比べて訪れる人も少なく静かな雰囲気です。島の名前はサン・シャペルを建て「聖王(Saint-Louis)」と呼ばれたフランス国王ルイ9世にちなんでいます。パリ随一の観光地ノートルダム大聖堂の裏側に当たるので、意外に静かで散策にも最適です。パリの喧騒を離れたくなったら、是非サン・ルイ島を訪れてみてください。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
サン・ルイ島

サン・ルイ島の歴史:中世の牧場から高級住宅地へ

その昔サン・ルイ島はノートルダム寺院の寺領で、ヤギや牛が草を食む家畜の飼育場だったそうです。島へは渡る橋がなく、セーヌに浮かぶ完全に独立した2つの小さな島でした。9世紀、当時のフランス国王がこの2つの島をパリの司教に与え、司教がノートルダム寺院の参事会に受け渡しました。フィリップ尊厳王の時代にパリを囲む城壁によって2つに分断され、西側が「ノートルダム島」(Ile Notre Dame)、東側は「牝牛島」(Ile aux Vaches)と呼ばれていました。中世の時代には「神の審判」と呼ばれる名高い決闘が行われていたそうです。アンリ4世の時代、建築業者のクリストフ・マリーがプールチエとル・ルグラチエという徴税官の援助を受けて国王から2つの島を結ぶ許可を得ました。しかしその直後の1610年にアンリ4世は暗殺され、サン・ルイ島の開発事業は息子のルイ13世に引き継がれます。マリーはノートルダム寺院からサンルイ島を高値で買い取り、1627年から1664年にかけて行われた工事によって、美しいバルコニーで装飾された優雅な屋敷が並ぶサン・ルイ島が生まれました。これが今も残る美しいサン・ルイ島(高級住宅地のある静かな島)の原型です。この時期にシテ島や両岸とサン・ルイ島を結ぶ橋が造られました。シテ島とサン・ルイ島を結ぶサン・ルイ橋は1634年に初めて造られました。サン・ルイ島と右岸のマレ地区を結ぶマリー橋は、この島の開発業者の名前にちなんだものです。17世紀に建てられた島の邸宅は、18・19世紀を通して多くの上流階級の貴族や芸術家に愛され、21世紀になった今でも当時の建物が残るパリの中でも貴重な地区となりました。

サンルイ島に住んだ著名人
18世紀から19世紀にかけて多くの芸術家に愛されたサンルイ島。島には18世紀を代表する思想家・哲学者のヴォルテール、『悪の華』を描いた詩人のボードレールなどが住んでいました。

島の目抜き通りへ

サン・ルイ島の中心には東西にサン・ルイ・アン・リル通り(rue St-Louis en L'Ile)が走っています。島の中心となる通りで、1614年〜1646年にかけて造られました。多くの高級画廊やブティック、地元の商店、レストラン、カフェ、書店、老舗のアイスクリーム店「ベルティオン」(Berthillon)などが並び、静かながらも観光客が多い場所です。最大の見どころは1726年に完成したフランス・バロック様式のサン・ルイ・アン・リル教会(Eglise St-Louis en L'Ile)。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
サン・ルイ・アン・リル教会

島にある唯一の教会

サン・ルイ・アン・リル教会(Eglise St-Louis-en-l'Ile)はサン・ルイ島にある唯一の教会です。パリでは他に見られない鉄製の時計と穴がいくつも空いた独特の尖塔が特徴で、島の住人だった建築家ルイ・ル・ヴォーによって設計されました(着工が1664年、完成が1726年)。小さいながらも内装が非常に美しいバロック様式の教会で、たまに宗教音楽のコンサートが開かれています。イエズス会様式で、17世紀の木彫りや、金と大理石でできた内装は豪華。ここで紹介したいのは一枚の絵画。生まれつき両腕のなかったセザール・デュコルネという画家の宗教画です。彼は幼少期から足で絵を描きながら努力して画業を重ねていました。その後出身地リル市に認められ、奨学金を与えられてパリにやってきました。パリで彼が描いた一枚『ガリア人に説教するサン・ドニ』がこの教会に飾られています。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
サン・ルイ島でアイスクリームを食べる

サン・ルイ島名物のアイスクリームを食べ歩き

島のグルメではアイスクリームとシャーベットが有名。島の中にはアイスクリームで有名なベルティヨン本店があり観光客に人気です(サン=ルイ・アン・リル通り29番地〜31番地)。ベルティヨン家の初代がカフェ・ホテルを経営しており、その後自家製アイスクリームを作るようになったのが現在のベルティヨン・アイスクリームの始まりです。牛乳や卵、生クリームなどの原材料へのこだわりが強く、提供されるアイスクリームとシャーベットは70種以上あるとされています。島ではアイスを食べ歩く人を必ず見かけるほど人気です。1954年に創業して以来、ベルティヨンのアイスは直販だけでなく地元のカフェやレストランなどへの卸売りも行っています。その他にもサン・ルイ島にはいくつかのカフェとレストラン、ブーランジュリー、フランス地方の特産品を扱ったアペラシオン・ドリジンや、オシャレなブティックなどがあります。

サン・ルイ島にあるパリ絶景スポット

サン・ルイ島で是非観てほしいのが、オルレアン河岸(Quai d'Orleans)からの眺め。この河岸通りからはシテ島に立つノートルダム大聖堂の後陣とセーヌ左岸の素晴らしい風景を眺めることができます。個人的にはノートルダムが最も美しく見られる場所だと思います。時間に余裕のある方は、セーヌ河岸まで下りてマロニエの木陰のベンチで贅沢なひと時を過ごすのもいいですね。また島の西端にあるルイ・アラゴン広場からは右岸にあるパリ市庁舎やサン・ジェルヴェ・サン・プロテ教会を眺めることができ、こちらもサン・ルイ島の絶景スポットです。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
夜のサン・ルイ島

ロマンチックな雰囲気に包まれる島の風景

サン・ルイ島とシテ島を結ぶサン・ルイ橋やマレ地区を結ぶルイ=フィリップ橋の周辺は、パリの中でも特にロマンチックな場所です。チェロ奏者が橋の上で音楽を奏で、恋人たちが橋の上に佇みシテ島とセーヌ川の美しい風景を眺めています。近くには赤い庇のレストラン。夕暮れ時にはセーヌの揺れる黒い川面に孤独な外灯たちのオレンジ色の光が投げかけられます。時折強い光を発して観光船がセーヌを通り抜け、その後は再び闇が訪れる。恋人たちも孤独な散策者もその闇に惹かれ彷徨い歩く。夜のパリを味わうには最高のロケーションといえるでしょう。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
ローザン館(サン・ルイ島)

ボードレールが青春時代を過ごした館

サン・ルイ島を縁どるアンジュー河岸の17番地(17 Quai d'Anjou)にあるローザン館(Hotel de Lauzun)は、建築家ルイ・ル・ヴォー(Louis Le Vau, 1612-1670)によって1657年に建てられた美しい邸宅。サン・ルイ島で最も美しい邸宅といわれています。ルイ・ル・ヴォーはヴォー・ル・ヴィコント城やグラン・トリアノンを設計した建築家として知られ、ヴェルサイユ宮殿の建築にも携わっています。武器商人のグリュアンが館主でしたが、公金横領罪で投獄され、その後ローザン公の邸宅となります。かつて詩人ボードレールが青春時代を過ごした館として知られています。ここではボードレールがジョルジュ・サンドらと怪しげな麻薬パーティーを開いていて、文学者テオフィル・ゴーティエやバルザックたちが通う『ハシシュ・クラブ』の会合場所になっていました。外観からはその豪華さは分かりませんが、2階にある金箔で飾られたバルコンが特徴的。室内装飾もベルサイユ宮殿に引けを取らない素晴らしさで、金箔を施した羽目板、天井画、イタリア式のだまし絵、細かな彫刻を施した木製家具などが設置され、パリに残る17世紀の邸宅としては最も豪華な家の一つです。

ヴォルテールが滞在した館

ローザン館の他にもサン・ルイ島で注目すべき館があります。ランベール館(Hotel Lambert)は17世紀の個人邸宅で、ローザン館と同じ建築家ルイ・ル・ヴォーによって1640年に建てられました。裕福だった資本家ニコラ・ランベールのために作られた邸宅で、ユネスコの世界遺産に登録されています(非公開)。館の内部装飾も素晴らしく、ル・シュウールとル・ブランなどの巨匠たちによるフレスコ画が飾られています(ル・シュウールの作品はルーヴル美術館で見ることができます)。ランベール館は数多くの作家が利用したことでも知られ、18世紀には哲学者のヴォルテール(Voltaire, 1694-1778)が滞在しました。また19世紀にはポーランドからの亡命者が政治活動の拠点として利用しています。20世紀に入りイギリスの財閥であるロスチャイルド家の所有となりましたが、2007年にカタールの首長家がランベール館を購入。2013年には改装工事の過程で火事が発生し、絵画を含む邸宅の一部が損壊しました。

先端には静かな公園がある

ランベール館の近くにはサン・ルイ島の東側の先端であるバリー小公園(Square Barye)があります。19世紀の彫刻家アントワーヌ・ルイ・バリー(Antoine Louis Barye)の名前がついた公園で、元々は徴税官のブルトンヴィリエの館の庭園だった場所です。現在は辛うじてその名残を留めています。観光客のほとんど訪れることがない公園ですが、その分とても静かで、観光では見られないセーヌ河の穏やかな風景を眺めることができます。

彫刻家カミーユ・クローデルが住んだ館が残る

美しい島を縁どるブルボン河岸の19番地(19 Quai de Bourbon)には彫刻家ロダンの弟子であり愛人だったカミーユ・クローデル(Camille Claudel/1864-1943)が1899年から1913年まで住んでいました。ここに住んでいたころはロダンと別れた後で、精神的に不安定な時代を過ごしていたと思われます。この後彼女は短く激しかった創作期間を終え、1913年に弟によって精神病院に強制入院させられます。そして30年以上も長い病院生活を送り78歳でその生涯を終えました。ここはかつて高等法院参事が所有していた館で、美しいマンサード屋根、マスカロン(怪人面)の装飾、錬鉄製の手すり付き階段など、過去の栄華を偲ばせる外観が見事です。19番地の壁にはカミーユ・クローデルがロダンに宛てた手紙の一部が刻まれています。カミーユの悲劇的な人生は2回ほど映画化されており、特にイザベル・アジャーニ主演の映画が有名です。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
アンジュー河岸29番地(サン・ルイ島)

ヘミングウェイが編集スタッフとして働いていたトランスアトランティック・レビュー編集室

サン・ルイ島はアメリカの作家ヘミングウェイのゆかりの地として文学ファンに人気でもあります(ヘミングウェイは文学修業のため1920年代にパリに住んでいました)。右岸側にあるアンジュー河岸(quai d'Anjou)29番地には、イギリスの小説家フォード・マドックス・フォードが主催する『トランスアトランティク・レビュー』という文芸雑誌の編集室があり、ヘミングウェイはここで編集スタッフとして働いていました。この建物にはまた、まだ無名だったヘミングウェイの「ワレラノ時代」を出版したことで有名になったスリー・マウンテンズ・プレス社(Three Mountains Press)が入っていました。ちなみにヘミングウェイの長編小説「日はまた昇る」に登場するユニークなキャラクター、ロバートコーンのモデルとなったハロルド・レーブと初めてヘミングウェイが出会うのもこの場所でした。また同じ河岸沿いにはヘミングウェイがよく夕食をとっていたマダム・ルコントのレストラン「ランデヴー・デ・マリニエ(Au Rendez-vous des Mariniers)」があり、「日はまた昇る」にもジェイクのお気に入りの店として出てきますが、現在はなくなっています。 パリ人気エリア:サン・ルイ島
サン・ルイ島に架かるマリー橋

マレ地区へは石橋を渡って

サン・ルイ島からマレ地区へは石橋を渡って歩いて行くことができます。マリー橋やルイ=フィリップ橋を歩いて右岸に渡れば、そこはもうマレ地区。ヨーロッパ写真美術館やヴォージュ広場もすぐ近くです。

有名な史跡や観光名所があるわけではありませんが、サン・ルイ島は静けさと上質さが残る特別な場所です。島の静かな石畳を歩き、セーヌ河岸のベンチで一休みする。観光だけではないパリ、パリの本当の良さを感じたい方は、次回のパリ観光で訪れてみてはいかがでしょうか。
サン・ルイ島へのアクセス(地図)
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