パリの通り
パリの通り:シテ・ヴェロン

シテ・ヴェロン

『枯葉』の詩人ジャック・プレヴェールと『日々の泡』のボリス・ヴィアンが住んだ緑豊かな美しい通り

シテ・ヴェロン

モンマルトルのふもとにある緑豊かな美しい裏道

モンマルトルの丘のふもと、ムーラン・ルージュで有名な活気に溢れるパリの歓楽街ピガール。その中心街であるクリシー通りを歩いていると、カフェやみやげ物店で埋まった道の間にふと小さな裏通りが見つかります。ここが今回紹介するパリの通りシテ・ヴェロン。「シテ・ヴェロン」(Cite Veron)と書かれたアール・ヌーヴォー様式の可愛らしい門をくぐると、そこには別世界が広がっています。静かで緑にあふれた通りが、繁華街の中心にあることにまず驚きます。そして、ここがパリ屈指の観光地であることを忘れ、緑豊かな田舎の小路を歩いているような気分になれます。通りは緩やかな坂道になっており、その両脇にはパリでは珍しい一軒家が並んでいます。

ジャック・プレヴェールとボリス・ヴィアンが住んだ

ここは小さな細い袋小路ながら、様々な文化と芸術が入り組んだ場所。緩やかな坂道にはパリで一番有名なバレエ学校"l'Academie des Arts Choregraphiques"があります。この学校はパリ・オペラ座バレエの最初のダンサーだったRaymond Franchettiによって作られました。またこの通りの6番地には1950年代にフランスを代表する2人の作家、ジャック・プレヴェールとボリス・ヴィアンが住んでいました。ジャック・プレヴェールはシャンソン「枯葉」(Les Feuilles Mortes)の作詞家です(彼がこの通りを歩く映像が残っています)。彼はマルセル・カルネ監督の映画『天井桟敷の人々』(Les Enfants du Paradis)の脚本を書いたことでも有名です。ボリス・ヴィアンはジャズ・トランペット奏者であり、『日々の泡』で知られる前衛的な作家。当時のインドシナ戦争に反対した『脱走兵』(Le deserteur)という歌も作詞しています。この2人の作風は全く違いますが、同じ時期に同じ通りの同じ階に住んでいたとは驚きですね。このアパルトマンの屋上からはムーラン・ルージュの風車の裏側が見えたそうです。プレヴェールはボリス・ヴィアンだけでなく、作家アンドレ・ブルトンやロベール・デスノス、詩人レーモン・クノーなどのシュルレアリストの作家たちとも交流がありました。そんな作家たちの面影を追いながら歩けるのもパリの通りの魅力です。

ジャック・プレヴェール(Jacques Prevert / 1900-1977)
フランスの詩人。代表作は「枯葉」(Les Feuilles Mortes)。マルセル・カルネ監督の映画『天井桟敷の人々』(Les Enfants du Paradis/1945)の脚本を書いたことでも有名。この映画はフランス映画史に残る映画のベスト1に選ばれた。1946年には詩や散文を載せた初の単行本『パロール』(Paroles)を出版し、現在まで版を重ねる代表作となる。アンドレ・ブルトンやレーモン・クノーなどのシュルレアリスト作家とも交流があった。画家や写真家とも交流があり、パリの写真家イジスと共同で写真集を出している。

ボリス・ヴィアン(Boris Vian / 1920-1959)
フランスの作家・詩人。ジャズ・トランペット奏者としても活躍した。前衛的な作風で知られ、代表作は『日々の泡』(L'Ecume des jours)や『北京の秋』(L'Automne a Pekin)など。他に黒人脱走兵と称して書いたハードボイルド小説などを発表している。生前の評価は高くはなかったが、死後にジャン・コクトーやサルトルたちによって再評価され、1968年の五月革命の時期には彼の小説が多くの若者の共感を呼んだ。『日々の泡』は後に映画化された。

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