パリの文化・歴史
パリの文化・社会・歴史:プランタン(パリのデパート)

パリのデパート

世界初のデパートはパリで生まれた。買い物を非日常体験に変えた「消費の宮殿」   
パリの文化・社会・歴史:ボン・マルシェ(パリのデパート)
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パリのデパート

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パリで生まれたデパートという消費形態

デパートといえば、大きな都市に最低一つはあり、今では当たり前のお店となっています。しかしデパートのなかった時代、お店には豪華なショーウィンドウやショーケースでの定価販売などは存在しませんでした。ほとんどの店が訪れた顧客の要望に応じて、裏から商品を出して価格交渉をしていました。デパートという陳列販売の商品スタイルが生まれたのはフランスのパリ。19世紀後半のオスマンによるパリ改造が行われた時期に、今日のいわゆる百貨店(デパート)が次々に生まれました。「豪華な内装」と「安心の定価」を兼ね備えたデパートは、自分が特別な空間にやってきたような「非日常感」を体験することができ、パリ市民の心をつかんで急成長していきます。世界で最初のデパートとはどんなものだったのでしょうか。

デパートの歴史(1):世界最古のデパート

日本ではまだ江戸時代だった1852年に世界初の百貨店「ル・ボン・マルシェ」がブシコーという商人夫婦によってパリ左岸のバック通りにできました。彼は初めて商品をショーケースに展示して見せること(陳列販売)を思いつきました。様々な商品を見せることで消費者の潜在的な欲望を喚起させ、購買意欲を高めることができると考えたのです。また陳列販売に加えてすべての商品を定価表示することにより、気になる商品の値段をあらかじめ知ることができるという安心感を与えました。そして最も重要だったのがデパートでしか味わえない非日常的な空間です。これはブシコーが当時建設中だったオペラ座の建築から思いついたと言われています。宮殿を訪れたかのような壮麗な内装がこれから始まるオペラ観劇への期待を高めるように、デパートも壮麗な空間で客を夢の世界に誘い込み、買い物を非日常のエンターテインメント体験に変えようとしたのです。こうしてボン・マルシェは今までにない「マガザン・ド・ヌヴォテ」(新しい店)としてデパートの営業をスタートしました。デパートの基礎を作りあげたブシコー夫妻は、特別な消費体験としてのデパートのイメージをパリ中に広めました。

日本初の百貨店は?
世界初の百貨店は「ル・ボン・マルシェ」ですが、日本初のデパートは三井呉服店。現在の三越です。1900年(明治33年)に三井呉服店(日本橋)は本店座売りを撤廃し、陳列販売に切り替えました。休憩室や外国人向け売り場を設置するなど、様々な訪問客に対応したサービスを展開しました。1905年(明治38年)には「デパートメントストア宣言」を新聞に掲載し、名前を三越呉服店に改め、日本初の百貨店として広く知られるようになりました。他にも明治期には白木屋呉服店や高島屋などが、食堂やショーウィンドウを設置したりと現在の百貨店にあるサービスを開始しています。

歴史(2):次々に生まれた有名なデパート

4年後の1856年にはパリで2番目い古い庶民派デパート「BHV」が完成します。その後1867年には「ル・ボン・マルシェ」で働いていたジュール・ジャリューゾがオペラ座の北側に「オ・プランタン」を開店しました。プランタンのできた年に元衣料品店だった「ラ・ベル・ジャルディニエール」(美しき女庭師)もオープンしています(現在は存在しません)。その2年後の1869年には「ラ・サマリテーヌ」がセーヌ河付近にオープン。現在日本人によく知られているオペラ地区の「ギャラリー・ラファイエット」は他のデパートからは数十年遅れて1893年の世紀末に生まれました。こうして19世紀の後半に、パリで有名なデパートが次々にオープンしました。この時代は大衆文化が花開いた時期で、パリ市民の消費体験が成熟に向かっていった時代でした。20世紀に入りデパートの設備やサービスはさらに改良されていき、今ではショッピングに欠かせないパリ観光の一部として多くの観光客や地元のパリジャンに親しまれています。

歴史(3):宮殿のような豪華さを目指して新店がオープン

多くのデパートが生まれた1860年代にパリジャンの体験を変える大きなイベントが開催されました。1867年の第2回パリ万博です。今回の万博は1回目の学術的な要素よりもエンターテインメントやスペクタクルを重視していました。万博が開催されると、豪華な宮殿を訪れたような非日常的な体験が話題を呼びました。会場を訪れた人々は夢の世界の商品を見て歩くような高揚感を持ったと言われています。その体験を消費と結びつけようと考えたデパートの経営者たちは新館の建設に着手します。彼らが目指したのはデパートの宮殿化。万博や王の宮殿のような豪華な空間を訪れれば、誰もが特別な人間になった気がします。そして非日常の場所では財布のひもも緩み、普段では買わないような商品もつい買ってしまう。そんな消費者の心理を狙ったのです。新館の手本となったのは建築中だった新オペラ座(今のオペラ・ガルニエ)で、その重厚なファサードと壮麗な中央階段を模倣した建築が新館のプランとして採用されました。こうして1872年にボン・マルシェが、1874年にプランタンとルーヴルが新館をオープン。ボン・マルシェの壮麗な中央階段をガラス天井は訪れた人をオペラの世界のように夢見心地にさせ、プランタンとルーヴルではまだ珍しかったエレベーターを設置することでデパートにスペクタクルな体験を追加しました。このようにデパートは必要な買い物をする場所ではなく、新しい世界を体験するための別空間になっていきました。

19世紀に生まれたガラスの建築
吹き抜けの空間にガラスを使う建築が生まれたのは19世紀の始めのことでした。当初は鉄道やパサージュなどの大きな空間に十分な光を取り入れる目的として使われましたが、デパートの新館では非日常体験を味わうツールとしてガラスが利用されています。ステンドグラスで覆われた大聖堂も同じ効果があると考えられています。

歴史(4):アールヌーヴォー様式

世紀末になると新たな芸術様式アールヌーヴォーがフランスで人気となります。植物のような繊細なフォルムを鉄で表現したデザインは多くの建築に採用され、常に新しさを求めていたデパートもそのデザインを内装に取り入れます。新興のデパートだったプランタンとギャラリー・ラファイエット、サマリテーヌの3店は特にデパートのアールヌーヴォー化に力を入れ、豪華絢爛な内装を実現していきました。1907年に完成したプランタンの新館はまさに鉄の花が咲き誇る楽園のような世界でしたが、残念ながら1921年の火災で焼失してしまいます(その後1924年に再建)。ギャラリー・ラファイエットの新館は1912年に完成し、建物全体に美しいアールヌーヴォーの芸術を施した内装が話題を呼びました。サマリテーヌも外観の一部をアールヌーヴォー様式で飾っています。

歴史(5):時代はモダンデザインに

しかし時代の移り変わりによってフランス人の美意識も変化していきました。時代遅れとなったアールヌーヴォーの建築は取り壊され、代わりにアール・デコやモダン様式が採用されるようになっていきます。ボン・マルシェは1920年に家具売り場用の新館をアール・デコの建築家ルイ・イポリッド・ボワローに依頼し、火災で焼失したプランタンは1924年に新館をアールヌーヴォーとアール・デコの折衷様式で再建しています。またギャラリー・ラファイエットは1932年に美しいアールヌーヴォー様式だった内装の一部を取り壊し、モダン様式の新館として作り替えました。サマリテーヌのファサードはアールヌーヴォー様式、アール・デコ様式、モダン様式と時代の変化が感じられる多様な装飾を残しており、その変遷の様子は今も見ることができます。このようにパリのデパートは時代とともにデザインを変化させながら、今も訪れる人に新たな体験を提供しています。

国家主導の大規模バーゲンセール「ソルド」

パリのデパートのオススメシーズンは1月と6月。この時期、パリにある全てのデパートや小売店で一斉にセールが始まります。フランスではソルド(Soldes)と呼ばれる人気のバーゲン。日本ではお店によってセールの時期がばらばらですが、フランスでは厳密にソルドの期間が決められています。年に2回しかないのは女性にとっては少ない気がしますが、しかしそのぶんセールの割引価格も大きく、この時期には多くのパリジャン・パリジェンヌがデパートや自分の好きなブランド店に押しかけます。赤字に白文字で大きく書かれたSoldes(セール)の看板は日本でも同じ。そして格安のワゴンを巡っての女性同士の熾烈な争いも日本と同じ。ソルド好きのパリジェンヌに交じって50%や70%引きの値札がつけられる大胆な買い物を楽しむのもパリ観光の一つかもしれません。

パリのデパート巡りに便利なメトロ駅は?
メトロ9号線はパリのデパートでショッピングしたい方には便利な路線です。ショセ・ダンタン・ラファイエット駅は「ギャルリー・ラファイエット」に直結し、アーヴル・コーマルタン駅は「プランタン」の最寄り駅。メトロを使ってデパートにアクセスしたい人におすすめです。またこれら2つのデパートはオペラ座からも歩いていくことができます。

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