パリの観光スポット
パリ観光地:ラ・サマリテーヌ

ラ・サマリテーヌ
La Samaritaine

蘇ったベル・エポックを体験できるパリの老舗デパート
2021年にリニューアルオープン済
  
パリ観光地:ラ・サマリテーヌ
パリ観光地:ラ・サマリテーヌ
パリ観光地:ラ・サマリテーヌ

ラ・サマリテーヌ

パリ観光地:ラ・サマリテーヌ
ポン・ヌフから見たラ・サマリテーヌ

長い修復を経て蘇ったパリの老舗デパート

パリで最も古い橋ポン・ヌフに立つと、右岸側に美しいアール・デコ様式建物が見えます。セーヌ川沿いに立つこの巨大な建物はパリの老舗デパート「ラ・サマリテーヌ」。2005年には建物の老朽化によって閉鎖が決定し、長い間修復中となっていました。閉鎖当時、近くへ行くとまるでベルエポックの廃墟のような雰囲気でしたが、コロナ禍を経た2021年6月にリニューアルオープン。現在はデパートの他に高級ホテルや公共住宅、オフィスなどが入った複合施設になっています。

デパートは19世紀当時に流行した建築スタイルであるアールヌーヴォー様式を忠実に復元した「ポン・ヌフ館」と最新技術を取り入れた現代風の「リヴォリ館」で構成され、伝統と変革の両方を体験できるデパートとして復活しました。セーヌ川に面したアール・デコ様式の建物には5つ星ホテルの「シュヴァル・ブラン」が入り、この歴史的な建造物に宿泊することが可能。ルーヴル美術館ノートルダム寺院の間にあるためパリの観光としても最高の立地にあるこのデパートは、パリ注目のスポットとして再び人気を集めています。

サマリテーヌの歴史1:名前の由来

デパートの名前は1813年までポン・ヌフの上にあったサマリテーヌ給水塔(ポンプ塔)に由来しています。サマリテーヌとはフランス語で「サマリア人の女」という意味。「サマリア人の女」とは「ヨハネの福音書」に登場するキリストに飲み水を与える女性のことです。給水塔にその女性の彫像が飾られていたことからサマリテーヌと呼ばれていました。この給水塔はルーヴルとチュイルリー宮殿に水を供給するためにフランス国王アンリ4世によって1607年に造られました。長い間使われ続けたポンプは何度か修復されたあとに1772年に再建。しかし1813年に解体され、浮遊性の公共スイミングプールに移設されることになりました。

サマリテーヌの歴史2:露天商が作り上げた高級デパート

ラ・サマリテーヌは1870年に商人エルネスト・コニャック(Ernest Cognacq)によって作られました。コニャックはもともとセーヌ河に架かるポンヌフでネクタイを売る露天商でしたが、ボン・マルシェの洋裁コーナーのトップ店員だったマリー=ルイース・ジェイ(Marie-Louise Jay)と結婚して、夫妻でサマリテーヌをオープンします。彼らが店を出した19世紀後半は百貨店文化が花開いたデパートの全盛時代。流行に後押しされたサマリテーヌはパリジャンの需要に応えて急成長を遂げていきます。しかもデパートの建てられた場所はセーヌに面したポン・ヌフ通り。人通りの多いポン・ヌフから見える絶好のロケーションでした。1875年、デパートの売り上げは100万フランを超えました。

百貨店文化が花開いた時代
ラ・サマリテーヌが生まれた19世紀末というのは、まさにオスマンによるパリ改造が行われた時期と重なります。この時期に今日のいわゆる百貨店(デパートメントストア)が次々に生まれました。豪華な内装による非日常体験と定価という安心感を兼ね備えたデパートは、パリ市民の心をつかんで急成長していきます。まず1852年に世界初の百貨店ボン・マルシェがブシコーという商人によってパリ左岸のバック通りにできています。1867年にはボン・マルシェで働いていたジュール・ジャリューゾがオペラ座の北側にプランタンを開店しました。同じ年、縫製工場を備えた元衣料品店の「ラ・ベル・ジャルディニエール」(美しき女庭師)がオープンしています(現在は閉館)。その2年後、隣にできたのが今回紹介する「ラ・サマリテーヌ」。そして世紀末の1894年には、日本でもよく知られるギャラリー・ラファイエットが華々しくオープンしました。19世紀後半はまさにデパートの時代でした。

サマリテーヌの歴史3:デパートの拡張とアールヌーヴォー様式

ベル・エポックの時代にあたる1890年から1910年にかけては、サマリテーヌにとって急拡大の時期でした。エルネスト・コニャックはデパート周辺の建物の買収に乗り出します。彼はモネ通り、バイエ通り、アルブル・セック通り、プレトレ・サンジェルマン・ロクセロワ通りに隣接する北側の区画の不動産を徐々に取得し、もともと立っていた建物をデパートの小売りスペースに変えました。南側の区画では、建築家のフランツ・ジュールダン(Frantz Jourdain)にアールヌーヴォー様式で装飾された建物の設計と建築を依頼。それは巨大なガラス屋根を支えるリベットで囲んだ鉄骨フレームによる最先端の建築でした。北部と南部の区画は、多色ガラス張りの溶岩パネルで飾られたスチールとガラスのファサードによって統一されました。装飾の豪華な鋳鉄製の手すり、孔雀や豹を描いたアールヌーヴォー様式のフレスコ画など内装も豪華。豊富な資金によって最先端の建築を取り入れたサマリテーヌはアール・ヌーヴォー様式の美しいデパートとなりましたが、当時のパリジャンの美意識にそぐわず、反対の声が多く上がったそうです。

サマリテーヌの歴史4:サマリテーヌの高級店が完成

1917年、建築家のフランツ・ジュールダンはキャプシーヌ大通り25番地にラ・サマリテーヌの新館である高級店を建設するように依頼されました。この建物の隣には創業者エルネスト・コニャックが集めた18世紀美術を収蔵する美術館がオープン。夫妻はボン・マルシェの創設者ブシコー同様に社会活動を積極的に行い、多くの美術品を収集して誰もが無料で見られるように一般公開しました。

サマリテーヌ創業者が開いた美術館
エルネスト・コニャックが集めた18世紀美術のコレクションは彼の死後パリ市に寄付され、現在はマレ地区にあるコニャック・ジェイ美術館(Musee Cognacq-Jay)に展示されています。

サマリテーヌの歴史5:栄光の20年代にアール・デコ様式のデパートに

コニャック夫妻が作ったデパートの経営は順調で、20世紀になってその需要はさらに高まっていきました。1920年代はラ・サマリテーヌにとって栄光の時代でした。1925年には店の売り上げは10億フランを突破しました。取り扱う商品の種類も多様化し、男女のファッションからカーテン、室内装飾、旅行用品、花と植物、書籍、楽器、お菓子、ワインなど、消費者の要望に応じてその品目は増えていきました。全国からも地方の特産品が集まり、「フランスの地域」コーナーが生まれました。この時期にデパートの外観を変えるプロジェクトが進み、建築家アンリ・ソヴァージュ (Henri Sauvage)の監督の下で当時流行だったアール・デコ様式の建設が開始。しかし、エルネスト・コニャックはこのプロジェクトの完成を見ることなく、1928年に亡くなりました。

サマリテーヌの歴史6:パリ最大のデパートへの成長と閉鎖

創業者が亡くなり、1930年代に入ってもその勢いは止まりませんでした。1931年の売上額は17億フラン。1933年にはギャラリー・ラファイエットとプランタンを超えるパリ最大のデパートになりました。ルーヴル河岸通りとリヴォリ通りに挟まれた2ブロックの建物はデパートにとって最高の立地であり、ルーヴル美術館とノートルダム大聖堂の間という、パリ観光にとっても最高の場所でした。 その後もデパートは順調に売り上げを伸ばしていきましたが、キャプシーヌ通りにあった高級店が1981年に閉店。1990年代にデパートの経営が悪化します。2001年にはルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMHグループ)に買収され、2005年には建物の老朽化によって安全性の問題から閉鎖が決定しました。

レオス・カラックスの映画『ホーリー・モーターズ』の舞台に
サマリテーヌは長い間閉鎖されてしまいましたが、他にはない記念碑的な建築美は映画の舞台としても使われています。フランスの映画監督レオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』(2013)ではサマリテーヌの内部が撮影されました。閉鎖された夜のサマリテーヌの映像は美しく、そのアールヌーヴォーの階段が連なる吹き抜けの広い空間は退廃的で壮大なものでした。ご興味のある方は修復中のサマリテーヌを見られる貴重な映像を是非観てみてください。

サマリテーヌの歴史7:ルイ・ヴィトンによって改装が決定

閉鎖後、サマリテーヌは時代に取り残された廃墟のようにセーヌ河を見下ろしていました。しかし2007年から2008年にかけてパリ市との協議が行われ、デパートとオフィス、公共住宅、ホテル、託児所が組み合わさった新しい複合施設を開発するための話し合いが進みました。以前の建物を複合的な利用方法で置き換えることは、厳しい安全基準を確保しながら建築的で装飾的な遺産を保護する唯一の方法でした。そして2010年、ルイ・ヴィトンがサマリテーヌの株式を100%取得。リニューアルに向けて改修されることが決定しました。

サマリテーヌの歴史8:2021年にリニューアル

コロナ禍によって工事は一年遅れましたが、生誕151年となる2021年6月、サマリテーヌはリニューアルオープンしました。セーヌ川に面した「ポン・ヌフ館」はかつてのアール・ヌーヴォー様式を復元することになり、19世紀当時の建物が蘇ることになりました。逆にリヴォリ通りに面した「リヴォリ館」は全く新しいデザインに変わることが決定。そのデザインを手掛けたのは日本人の建築家である妹島和世と西沢立衛による建築ユニットSANAA。全体をガラスで覆った近未来的な外観で、その透明感とシンプルさはパリに溶け込み周囲の建物を映り込ませる工夫がなされています。そしてセーヌ河に面したホテル部分はルイ・ヴィトン系列のホテル「シュヴァル・ブラン」(Cheval Blanc)入ることになりました。建物には当時と同じアール・デコ様式が採用されています。パリの歴史的建築に登録されたこのデパートを保護・修復しながらその利用価値を高めていくことは並大抵の工事では実現不可能ですが、LVMHは長い期間をかけてそれを実行に移しました。買い物だけでなく歴史的な価値と最新技術を備えた建物として、新たなパリの観光スポットとなっています。

ルイ・ヴィトンによるファッションショーの舞台にもなった
新型コロナウイルスが流行した2020年10月には、ルイ・ヴィトンの2021春夏ウィメンズ・ファッションショーがサマリテーヌを舞台としてオンラインで開催されました。アールヌーヴォー様式の内装を背景にクロマキー合成用のグリーンバック(CG用の背景)が設置され、そこにヴァーチャル映像を合成したショーがオンラインで配信されました。

デパートだけじゃない新体験

リニューアル後のサマリテーヌはデパートという名前にとらわれない施設になりました。店内には約600ブランドが集まり、そのうち40ブランドはサマリテーヌ限定商品。化粧品売り場はヨーロッパ最大級の面積となり、北側のガラス張の建物ではライフスタイルブランドや若者向けのストリートウェアを中心に販売されます。5つ星ホテル「シュヴァル・ブラン」側にはギフトショップやVIPスペース、ディオールのカスタマイズスパ、屋外プール、レストランなどが入ります。他にも96戸の公共住宅、オフィス、デイケアセンター、託児所などが併設され、まさに近未来のライフスタイルのための複合施設です。

伝統と変革を内包するパリならではのこのデパートは、複数のコミュニティーが利用する多様性に富んだ未来の空間にふさわしい建築といえます。パリを観光する際には様々な歴史的スタイルが混合したラ・サマリテーヌを是非訪れてみてください。
パリ観光基本情報
ラ・サマリテーヌ / La Samaritaine
パリの観光地
オープン:1870年
住所:19, rue de la Monnaie 75001 Paris, フランス
最寄メトロ:Pont Neuf(ポン・ヌフ)
エリア:パリ1区
カテゴリ:パリの観光スポット
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