画家の暮らした村と別荘を訪れる
常に賑わうパリから少し離れるだけで、印象派の画家たちが愛した大自然に触れる旅を楽しむことができます。イエールからバルビゾン、フォンテーヌブローに至るドライブルートには、印象派の画家たちの足跡が刻まれています。
イエールは画家ギュスターヴ・カイユボット(1848-94)が19年間家族と共に過ごした場所で、夏の別荘が残っています。彼はこの別荘で89点もの絵画を描きました。特に1875年から79年の間には、『水浴者、イエール川のほとり』など、カイユボットの主要な作品のいくつかが描かれています。別荘はローマのボルゲーゼ公園にある「ラファエルの家」をモデルに建てられた美しい建築物で、丁寧に修復され2017年6月より一般公開されています。カイユボットの別荘には彼が過ごした当時の調度品が置かれ、彼が実際に暮らしたプライベート空間を忠実に再現しています。別荘を訪れれば、19世紀末当時の雰囲気を体験することができるでしょう。天気がよければ、別荘の緑溢れる庭や菜園、東屋を散策してみましょう。美しい11ヘクタールの庭は街を流れるイエール川に沿って広がっています。別荘と庭を見学したあとは、イエール川に立ち寄って自然の光にきらめく水面を眺めてみるのも素晴らしい至福の体験です。
19世紀の風景画家が誕生した場所へ
フォンテーヌブローへのドライブで立ち寄りたい場所の一つがバルビゾン(Barbizon)。バルビゾンはパリの南60kmのところにある村で、19世紀にバルビゾン派(l'ecole de Barbizon)といわれる風景画家が滞在して「画家の村」と呼ばれています。バルビゾン派という言葉は19世紀末に生まれた言葉で、当時パリを離れて自然の中で写実的な風景を求めた画家たちのことを指します。エコール・デ・ボザール(パリにある国立美術学校)のアカデミックな美術教育に失望した若き画家たちが1830年を境にバルビゾンに集まり、自然の光の中で自由に創作に励みました。この村ではパリに比べて生活費も格段に安く、村人たちが芸術家に親切だったことも、若い画家が集まりやすかった理由の一つといわれています。またバルビゾンはフォンテーヌブローの森とも一本道でつながれていて、多くの画家が緑豊かな森で写生を行い、多くの作品を残しました。今もバルビゾンには素朴な自然風景や昔ながらの伝統的な家が残り、絵画を愛好する旅行者に人気のエリアです。
ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-Francois Millet)はバルビゾンを愛した画家の一人で、1849年から亡くなる1875年までここで暮らし、「晩鐘」(1853)や「落ち穂拾い」(1857)など多くの作品を描きました。オルセー美術館に展示されている「落穂拾い」は農村生活を描いたミレーの代表作で、ミレーのアトリエで制作されました(彼は目で見た記憶を頼りにアトリエ内で制作する手法をとっていました)。現在ミレーの家はジャン=フランソワ・ミレー記念館として一般公開されています。外観は当時の家そのままに、彼の作品を見たり、アトリエを訪れたりすることができます。バルビゾン派が終焉を迎えるのは、この地で活躍した画家たちが亡くなった1875年頃のことでした。パリからバルビゾンに移住し、移り変わる光の表現を追求した彼らの作風は、のちの印象派画家たちに受け継がれていきます。
フォンテーヌブローの森
王の狩猟場だったフォンテーヌブローの森へ
バルビゾン村を訪れたら、次の目的地フォンテーヌブローの森(Foret de Fontainebleau)へ。フォンテーヌブローの森はパリ南西50kmのところにある2万haの広大な森で、かつてはフランス王家(ブルボン朝)の狩猟場でした。現在はパリジャンの週末の憩いの場となっており、ジョギング、サイクリング、乗馬など自然アクティビティが好きな方にはもってこいの観光地。特にロッククライミングの愛好家たちにとっては楽園のような場所で、至るところにある砂岩の尾根や絶壁は100年以上前からアルプス登山を目指す人の格好の練習場所になっています。森へは電車でもアクセスできますが、車で行くことにより、さらに森の深いエリアを探索することができます。おすすめがPlace de Cuvierという巨岩の多い一角で、岩登りの愛好家たちのメッカとなっています。バルビゾン村からもすぐ近くなのでセットで観光が楽しめます。本格的なトレッキングでなければスニーカーでも歩けるので、興味のある方は是非トライしてみてください(転倒の危険がありますので、特に岩を降りるときはご注意ください)。
フランス王家の栄華が残る宮殿へ
森に囲まれたフォンテーヌブローの街の中心には様々な様式が入り組んだ不思議なお城があります。ここはパリ郊外の観光地として人気のフォンテーヌブロー宮殿。優美なルネサンス様式の宮殿で、国王が住んだフランス最大の城館の一つです(城内の居室は1900室もあります)。有名なヴェルサイユ宮殿ができる以前は、中世から近代にかけて歴代のフランス国王がここに住んでいました。王家の歴史を秘めた唯一無二の建築物は1981年に世界遺産に登録されています。その魅力の一つがフランスで最も美しいと言われる装飾と家具・調度品。壁や天井は木製の鏡板や金箔の彫り物、フレスコ画、タペストリー、絵画などで飾られ、国王の居住地だったこの宮殿の豪奢さを際立たせています。家具の多くはルネサンス期に作られた優美なもので、寄木張りの床には最高の木材が使用され、暖炉には美しい装飾が施されています。
宮殿の歴史は12世紀初めにさかのぼります。建てられた当初は中世の要塞でした、約100年後にはルイ9世が宮殿を拡張し、フォンテーヌブローの地を愛したフランソワ1世は1528年、フランス最大のルネッサンス様式の宮殿に作り変えました(1つの塔だけは中世の姿をとどめています)。宮殿の改築を手掛けたのはイタリアから連れてこられた優秀な職人たちでした。かつてここには現在ルーヴル美術館に所蔵されている「モナ・リザ」が飾られていたそうです。
その後、アンリ2世、アンリ4世、ルイ14世など、その壮大な宮殿には歴代のフランス国王が居住し、時代に応じて改築され、その変化はルイ16世の時代まで続きました。フランス革命期には家具の盗難や破壊に遭いましたが、宮殿自体は損傷しませんでした。フランス革命後は宮殿内は空の状態になりましたが、宮殿にやってきたナポレオン1世が家具や調度品を新調し、宮殿をさらに改装しました。そしてルイ・フィリップの時代、宮殿は全面的な修復工事が行われ、現在のような外観になりました。狩猟場だった森の中にある宮殿を訪れ、フランス王家の栄華の跡を探してみませんか?ヴェルサイユ宮殿と比べて空いているので、落ち着いて見学することができます。このような観光地にアクセスできるのもパリ発レンタカードライブの魅力です。
ドライブで立ち寄りたいイエールの観光スポット
- カイユボットの別荘(Propriete Caillebotte)
- ギュスターヴ・カイユボットが暮らした当時の様子を再現した夏の別荘
- 住所:8 rue de Concy, 91330 Yerres
ドライブで立ち寄りたいバルビゾンの観光スポット
- ジャン=フランソワ・ミレー記念館(Maison-Atelier de J.F.Millet)
- ミレーの私物や手紙、デッサン、版画などを展示
- 住所:27 Grande Rue, 77630 Barbizon
- バルビゾン美術館(Musee departemental de l'ecole de Barbizon)
- かつて画家たちが寝泊りしていた旅籠屋を改装した美術館で、バルビゾン派の画家の作品を展示
- 住所:〈ガンヌ旅館〉92 Grande Rue / 〈テオドール・ルソーの家〉55 Grande Rue, 77630 Barbizon
ドライブで立ち寄りたいフォンテーヌブローの観光スポット
- フォンテーヌブローの森(Foret de Fontainebleau)
- パリ南西にある広大な森。かつてフランス王家の狩猟場だった
- フォンテーヌブロー宮殿(Chateau de Fontainebleau)
- 中世から近代まで歴代のフランス国王が住んだ宮殿
- 住所:Chateau de Fontainebleau, place General de Gaulle
パリからフォンテーヌブローへのアクセス
- 距離と所要時間:80km / 1時間30分
- 経由地:イエール、バルビゾン
- エリア:パリ近郊
パリからフォンテーヌブローのドライブルート(地図)
パリからフォンテーヌブローのドライブルート(地図)